ルール1 みな人間であるということを忘れない
あなたがその昔、両親や幼稚園の先生から教えてもらった一番大事な人生のルールは、とても簡単なことで した。「自分が他人にしてもらいたいことを、他人にもして上げなさい。」自分が相手の立場だったらどう思うでしょうか。自己主張をするのはいいのですが、その時に他人の気持ちを傷つけないように努力すること。
サイバースペースでは、このことをもっと基本的な言い方で表現します。
みな人間であるということを忘れない
電子的にコミュニケーションしているとき、あなたに見えるのは、コンピュータのスクリーンだけです。自 分が伝えようとしている意味を相手に理解させようとしても、表情やジェスチャー、声の調子を変えてみたりすることはできません。唯一の手段は、書かれている文字だけなのです。それはあなただけではなく、相手に とっても同じなのです。
オンラインで話をしているとき��電子メールを交換するのであれ、ディスカッショングループの中で書か れていることに対して書き込みをしている時であれ��、あなたが相手の意図を取り違えることは簡単です。 そして相手が多かれ少なかれ自分と同じ感情をもった人間であることを忘れてしまうのも、簡単なことなので す。これは恐ろしいことです。
ネットワークは、皮肉な側面を持っています、本当に。ネットワークのおかげで、決して出会うはずのなかっ た人と知り合うことができます。しかしその一方、このメディアは、その特性ゆえにこの出会いを非人間的で 物質的なものに変えてしまいます。電子メールをやりとりしている人間は、時としてあたかも自動車の操縦席 にすわった時のある種のドライバーのような振る舞いをすることがあるのです。こういう人は、相手のドライ バーをののしり、侮辱のために鄙猥な身振りをし、野蛮人のような振る舞いをするのです。そんなことをして しまう人でも、たいてい、職場や家庭ではそんなことはけっしてしません。相手との間に自動車が壁になって いるので、許されるものと思い込んでしまうのです。
「ネチケット」として読者に伝えたいことは、そういう行為は受け入れがたいことだということです。ネット ワークに接続し、自分の意見を自由に語ってください。今まで知らなかった世界を探検してください。どんど ん新しいことにチャレンジしてみてください。でも覚えておいてほしいのは、このネチケットの第1原則「そこには生身の人間がいる」ということです。
面と向かって言えますか?
ライターでありマッキントッシュの伝道者であるガイ・カワサキ氏は、こんな体験を紹介しています。彼は 今まで会ったことのない人物から、電子メールを受け取りました。オンラインで、その差出人は、「(カワサキ氏は)何ひとつ興味深い話題も持っていないほど、ひどいライターだ」と書いていたそうです。信じられないほど失礼ですね? しかし不幸にしてこのようなことは、サイバースペースにおいては、よくあることなのです。 ガイのような有名人に対してメールを送ることができるというということは、多分、物凄いことなのです。彼 が悪意に満ちた手紙を開いて読んだときの不愉快な顔を見なくてすむということもあるでしょう。理由がなんであるにせよ、このようなことは、よくあることなのです。
このようなことからガイはこんなテストを提案しています。書き込みをする前、メールを送る前に、「こんな ことをその人に、面と向かっていえるだろうか?」こう自問してみるのです。その答えがノーであるならば、読 みかえし、書き直します。サイバースペースという場所にとらわれず、自分が日常生活で他人に対して言うようなつもりで、相手の気持ちを考えて書き直します。そして日常生活で面と向かって自分が言えるものができ るまで、これを繰り返すのです。
もちろん中には、「私は相手が不愉快になるようなことを面と向かっていうことに、快感を覚えるのだ」とい う人がいるかもしれません。そういう人は、この本に書いてあることではどうにもなりません。そういう場合 はこのネチケットはお役に立てません。『ミス・マナーの他人を不愉快にさせない究極のマナー集』 (MissManners’ Guide to Excruciatingly Correct Behavior)を買ってください。
オンラインでは、怒りっぽくない方がいいもうひとつの理由
サイバースペースでの通信は、電子メールにしろ、ディスカッショングループでも、あなたの言葉が書き残 されているということです。これはつまり、あなたが書いたものは、あなたの手の届かないどこかへしまわれ る可能性があるのです。言い換えるとあなたが書き残した言葉が戻ってきて、独り歩きをして、取り返しがつ かなくなる可能性があるのです。
有名な話ですが、イラン・コントラ事件の関係者であったオリバー・ノース元中尉は、ホワイトハウスの電 子メールシステムである電子事務システム(PROFS)の熱狂的な使用者でした。彼は自分が受け取ったり送った 電子メールで、法に触れるものは、几帳面にひとつひとつ消していました。彼が知らなかったのは、PROFSでやり取りされたものは元中尉の電子メールも含めて、ホワイトハウスの他の場所で、コンピュータ室のスタッ フが、すべてメーンフレームごとバックアップをとっていたということです。裁判のとき、このバックアップ テープがノース元中尉に不利な証拠として、待ちかまえていたのです。
注意深くなるために、わざわざ犯罪を犯して、経験を積む必要はありません。あなたが送ったメッセージは、 相手が保存したり、転送したりできるのです。一旦、あなたが送信してしまったものの行方は、コントロール できないのです。
ルール2 実生活で守っている態度と同じ基準にオンラインでも従うこと。
ほとんどの人は、生まれつきの性格のためか、あるいは警察に厄介になるのが嫌なのか、法律に従って生活 をしています。一方、サイバースペースにおいては、捕まる可能性は低いように思えます。それにコンピュー タの向こう側に人がいるのを忘れ、実生活におけるよりもレベルの低い倫理基準や行動様式でも受け入れられると思っているような人もいます。
このような誤解の原因はわからないでもありません。しかし、そのような考えは間違っています。サイバー スペースのいくつかの場所では実生活とは行動基準が「違っている」かもしれませんが、だからといって実生活 よりも「低い」ということはないのです。
倫理を守ろう。
「倫理などあってもないようなものだ」などという言葉を、信じてはいけません。本書はマナーの本であって 道徳の本ではありません。けれども、もしあなた自身がサイバースペースにおいて、道徳上のジレンマに悩む
場面に遭遇した場合は、実生活で従っている行動基準に照らしてみましょう。たいてい答えは見つかるもので す。もうひとつ、ネチケットとして守るべき倫理について言いますと、使用期間が決められていて、使い続ける時には対価を払うことになっているソフトつまりシェアウェア ※には対価を払いましょう。シェアウエアに支払をすることが、より多くの人がシェアウェアを開発する励みになるのです。あなたにとって送金を要求され ている金額は、わずかなものでしょう。しかしそのわずかな額も、サイバースペース全体にとっては、長い目 で見ると利益につながるのです。
※ ハッカーの一人ボブ・ワラス(BobWallace)がつくった新しいソフトウェア流通システム。命名も彼。ソフトウェアを「売る」かぎりは、コピーをつくった瞬間に著作権法違反となり、共有ができない。従来の「売買」ではなく、「ともかく使って、気にいったら(後から)お金を払ってもらう(Usefirst,paylater)」というしくみをとることによって、ソフトウェアの共有と営利活動の融合を図った。
法律を破ることは、ネチケット違反です。
もしあなたがサイバースペースにおいて、法律に触れるようなことをしたくなったとしたら、それはネチケッ トを破ることになる可能性が大です。いくつかの法律は、どうやって従えばいいかと悩むほど、曖昧で複雑で す。そのいくつかの場合については、サイバースペースに法律をどう適応するかというルール作りを、いまやっ ているという状況だともいえます。この本で、プライバシー(詳細は163ページの電子メールのプライバシー)、 と著作権(詳細は175ページ サイバースペースと著作権)に関する法律の例を取り上げます。もう一度言うと、この本は法律のマニュアルではなく、ネットワークにおけるマナーの本です。それでも、ネチケットは、社会でもサイバースペースでも、読者が法の範囲内で行動をするように要求するものです。
ルール3 自分がサイバースペースのどこにいるかを知っておくこと。
ネチケットは、あなたが参加しようとしている場所によって違います。
あるところで受け入れられたからといって、他でも受け入れられるとは限りません。たとえばTVにかかわる ディスカッショングループでアイドルのゴシップについて語ることが許されるからといって、ジャーナリスト のメーリングリストでは、根拠のない噂は不評を買います。
ネチケットは、どこにいるかによって、違ってくるのです。自分がどこにいるのかを知るのが重要なのです。 そしてここから、次の付則が導き出されます。
書き込む前に、のぞき込むこと
サイバースペースではじめてのところに行ったなら、まずは周りを見回すのです。しばらくはチャットに耳 を傾け、過去に書かれたものを読みます。そこに以前からいる人たちがどういう身のこなしをしているかを見 て、全体の雰囲気をつかんだら、さあ、参加しましょう。
ルール4 他の人の時間とバンド幅を尊重すること。
言い古されていることですが、以前よりも私たちは自由になる時間が減っています。睡眠時間も減らし、祖 父母の時代よりも便利な機械があるにもかかわらず(むしろ、それゆえに)、労働時間は減っているはずなのに どんどん自由時間が減っています。あなたが電子メールやどこかのグループに書き込むとき、その書いたもの は、読んだ人の時間をとってもいるのです(あるいはそうしたいと願っているのかも)あなたの書いたものを人が読むために費やした時間が無駄でないようにするのは、あなたの責任です。
バンド幅という言葉は、時間と同義語として使われることがあります。しかし、実際は違うものです。バン ド幅の本当の意味は、サイバースペースの全ての人につながる回線やチャンネルが運ぶことのできる情報量の 運搬能力です。通信回線が一定の時間に運べる量には限度があるのです。仮に最新鋭の光ファイバーケーブルであったとしてもです。
この言葉は時として、ホストコンピュータが一度にどれだけの情報量を蓄積できるかという意味でも使われ ます。もしあなたがちょっとした手違いで、同じ文書を5通同じニュースグループに送ったとしましょう。す るとあなたは、(同じものを5回も人に読ませてしまうことで人の)時間を無駄にすると同時に、(同じ情報を繰 り返し送信することで回線に負担をかけ、蓄積させることでそれだけホストに対して負担をかけることになり) ネットワークの処理能力を浪費しているのです。
サイバースペースは、あなたを中心に回っているわけではない。
大半の読者にとってこれはおそらく余計なお世話でしょうが、私はあえてここに付け加えます。あなたが重 大な問題に打ち込み、夢中になっていると、他の人はそれ以外のものに関心があることを忘れがちになります。 誰かにものを尋ねたとしても、その答えがすぐにくるとは期待しないように、また自分の熱心な議論に読者全 員が賛成してくれたり、興味をもってくれると考えないように。
ディスカッショングループにとっての規則
ルール4は、ディスカッショングループを利用している人にとって様々な意味があります。ディスカッショ ングループを利用している人の多くは、すでに長い時間を、コンピュータの前で過ごしています。夕食の支度 が終わり、あなたの家族はあなたをいつ呼ぼうかといらいらしている間、あなたはいろいろなメッセージを読 んでいます。たとえば、小犬のトイレの最新のしつけ方法、あるいはズッキーニの料理法だとかを。
書込みを読むためのほとんどのプログラムの動作は非常にゆっくりなので、書かれている文書を読めるよう になるだけでも、しばらくかかります。おまけに、ひとつひとつの文書に書かれているヘッダーの情報の羅列 を読まないと、肝心の読みたいメッセージにたどりつけません。読んでみたら、たいした内容でなかったとい う場合、喜ぶ人はいません。この詳細については、「ディスカッショングループのネチケット」を参照ください。
メッセージは、誰に対して送るべきものでしょうか? あるいは、なぜ「メーリングリス ト」が顔がひきつってしまうような言葉になるのでしょうか?
昔はカーボン紙(注1)を使い、コピーをしていました。カーボン紙を使った場合、コピーは5枚までが限度でした。それゆえ、その5枚を誰に送るのかを決定するのは、とてもたいへんなことでした。
注1 カーボンコピー紙をご存じない読者の方のために。控えに取りたい紙と書き込む紙の間に挟む黒い紙のことで、それを挟んでタイプを打って元の書類を作ると同時に控えを何通か作りました。人が写しを作る時間を大幅に節約してくれましたし、コピー機のない人には特に役に立っていました。
今では、コピーはいとも簡単にできます。ほとんど習慣のようにして、私たちは人にコピーを送っているこ とに気がつきます。一般的にいってこれは、不作法です。今は知らなければならない情報が溢れているため、 人は情報に追われ、自由な時間は短くなっています。誰かにコピーのメールを送る前に、相手が本当に知りた いことなのか、自問してみましょう。もし答えが「そうではない」というのであれば、相手の時間を無駄にしないように。「その人は、興味が無いかもしれない」ならば、センド・キーを打つ前に再考しましょう。
※ カーボン紙を使った複写を英語でCarbonCopyという。略してcc。電子メールの場合、複写を第三者に送るときは、 ccという略語でその旨を表記することが多い。詳しくは第4章「色々な電子メールの機能」参照。
ルール5 オンラインではいいかげんな表現をしないこと。
匿名であることのメリットを活用しましょう。
ネットという場所が、冷酷、残酷で、人を傷つけたがっている人でいっぱいだという印象を与えようという つもりはありません。一般社会同様、ネットワークの世界でも人はみな好かれたいと思っているのです。ネッ トワーク、とりわけディスカッショングループのおかげで、他では出会うことができなかった人たちと知り合 えるのです。しかもこの相手の誰にもあなたは見えません。肌の色、目の色、髪の色やら、体重、年令、服装 で評価されることはありません。
あくまでもあなたが書くものの中身で、あなたが評価されるのです。ネットワークで通信しようというたい ていの人にとって、むしろこれは利点です。そもそも書くのが嫌いな人は、それほど熱心には参加しないでしょ う。そこで、正しい文字づかいや文法が大事になってくるのです。(注2)
注2 実際、こういったことがどのくらい重要かということは、ネット上では議論のあるところである。すごい激論と いうのではなく、ずっと継続されている議論として。電子的なコミュニケーションは、自発的なもので、また衝動的 なものだから、文法や文字を気にするべきではないと考えている人もいます。一方、書き込みをする前に注意するこ とは意味のあることだし、誤字や文法のおかしな書き込みは悪い印象を与えると考える人もいます。お分かりのよう に私は後者の立場です。とは言っても、文字や文法についての罵倒は通常よいことではありません。ルール7をご覧 下さい。
さて、もしあなたがネットでかなりの時間を過ごしているのに、「書く」のが苦手だったら? この機会に書 き方の腕をみがくトレーニングをしてみてはいかがでしょう。いろいろ本もでていますが、スクールの類に通 う方が、為になり、またおそらく楽しいことでしょう。あなたが年長者であるならば、十代の若者などと一緒 に、「補習教室」に通う必要はありません。文章を書く勉強よりも、編集などのやり方を勉強する方がいいでしょう。編集作業などを学ぶコースでは、通常、文書表現の基礎的なルールなどをかなり包括的に勉強することになります。しかも受講者も来たいから来ている人ばかりです。これらの教室は、大学や自治体が主催しているものや、カルチャースクールがいいでしょう。びっくりするほど色々なものがありますので探してみて下さい。このような教室に通うことのおまけのメリットは、生身の人間と出会えることです。
☆ 自治体などが、主催していることもあるが、日本にはこう言ったものはほとんどないようである。
何を話しているのかを忘れずに、また、分かってもらえるようにしよう
よく考えて書いて下さい。何について話をしているか、わからなくならないように。「私は、~だと思う」あ るいは、「私は、~と考える」と書く時には、事実かどうかを調べる前に、このような書き込みをしてもいいのか、自問してください。間違った情報は枯れ草に火をつけたように、大きく燃え広がります。二度か三度受け継ぎされてしまうと「伝言ゲーム」のように、予想もしない歪曲をされてしまうかも知れません。最初に自分が書いたことが跡形も無くなってしまうというわけです。(これは逆に、だからあまり自分が書くものの正確さにこだわっても仕方がないという理由になるかもしれません。他人がそれをどうこうする部分について責任を負うという訳ではありませんが、自分が書いた内容には責任を持たなくてはなりません。)
さらに書く内容については、明解さと論理性を心がけてください。誤字もなくて、文法にも問題がないのに、 何を言っているのか分からない時があります。自分でも本当はわかっていないような難しい言葉をたくさん使ったりするときにそうなりがちです。感銘を与える価値のあるものしか、感銘されません。簡潔を心がけた方がよいでしょう。
罵倒(flaming)をさそうことを書きこまないように
最後に、楽しく、礼儀正しくしましょう。攻撃的な言葉を使ったり、論争のための論争をしてはいけません。
なお詳細については、「罵倒の技術」を参照して下さい。
質問 ネットで、罵るような言葉を使ってもいいのでしょうか?通常とは違う美意識で、下水も芸術的作品であると評価される場所(USENETのalt.tastelessなど)に限っては、 受け入れられるでしょう。しかし普通は、罵詈雑言を発したいと思った場合には、「Fの字」とか「Sugar」とか婉曲に表現する言葉を使うべきでしょう。古典的な方法ですが、アステリスクを使って、「S***」( “Shit”クソ!の宴曲表現)など、伏せ字にする方法もあります。ネットでのコミュニケーションにユーモアはなくてはならない ものです。それによって、他人の気持ちを不必要に害さないですみますから。それでも、あなたが言いたいこ とは皆、読み取ってくれるのです。
ルール6 専門の知識を分かち合おう。
いろいろ否定的な言葉を並べてきましたが、最後に前向きなアドバイスをしましょう。
サイバースペースでの強みは、その「数量」にあります。オンラインで質問して、迅速でなおかつ適切な回答 が得られるのは、知識のある人達が大勢その質問を読んでくれているからです。参加している人の中で、本当 に専門的知識が豊富で、適切な言葉で回答できる人がわずかであったとしても、世界の知識の量は増大すると いうわけです。インターネット自体、科学者たちが知識と情報を共有するため作られ、成長してきたのです。 次第に、科学者以外の人々も加わるようになってきました。
あなたも、自分でできることは貢献して下さい。あれは駄目、これは駄目と否定的なことばかり並べてきま したが、あなたにもなにか他の人々と共有できる知識があるはずです。他の人々と自分の知識を共有するとい うことを、恐れないで下さい。
とりわけ自分が質問した結果を他の人と共有するというのは良いマナーです。返事がたくさん寄せられると 思う質問を書き込む時、あるいは普段あまり行かないディスカッショングループに質問を書き込む時には、返 事はグループに送るのではなく、直接、電子メールでお願いしますとするのが、習慣です。これに色々答えを もらった場合には、それをまとめてしてディスカッショングループに書き込んで下さい。こうすれば、あなた の質問にわざわざ答えてくれた専門家が手間をとってくれたおかげで、皆が恩恵を受けられるでしょう。
あなた自身が専門家であれば、できることはもっと色々あります。色々な人が様々なネット上の情報のリス トや参考文献のリストを自由に書き込んでいます。その中にはオンラインの法律関係のリソースからよく売れ ているUNIX関係の文献リストまであります。あなたが、たとえばあるディスカッショングループの中で積極的なメンバーであり、まだそのグループにFAQ(よくある質問とその回答集)ができていないなら、なにかFAQを書いてみることも考えてください。他の人にも面白そうだと思うテーマを調べた場合には、それをまとめて、書き込んでください。「サイバースペースの著作権」の章では調べたことを書き込む場合の著作権に関する問題について多少触れていますので参照下さい。
自分の知識を分かち合うというのは楽しいことです。それはネットワークの古くからの慣習です。これで世 の中が少しはましな場所になります。
ルール7 罵倒戦争(flamewar)を抑制しましょう
罵倒(flaming)というのは、いかなる感情も押さえることなく、自分の意見を強く主張することです。これを 読んだ人に「よーし、どんな風に思っているのかはっきり言ってみろ」と応答させるようなメッセージのことで す。洗練された話術というのは、どこかにいってしまっています。
ネチケットは罵倒(flaming)自体を禁じるものでしょうか? そういうわけでは決してありません。罵倒は、ネットワークの古くからの伝統です。(ネチケットは決して伝統に立ち入るものではありません。)罵倒は書くほうにとっても、読むほうにとってもとても面白かったりもします。また、罵倒を受ける側も、そういう憤激をうけるのが相応しいという場合もあるのです。
それでもネチケットは罵倒戦争、つまり、二人ないし三人の人によるお互いの怒りの文章の連続の永続は禁 じます。これがディスカッショングループの雰囲気を決めてしまい、仲間感覚を破壊してしまうことがありま す。罵倒戦争は、はじめは面白くとも、それに関与していない人達にとっては、すぐに退屈なものになります。 そうした論争はバンド幅を不公平に独占していることになります。
罵倒の送り方、受けとめかたについてのアドバイスについては、93ページ「罵倒の技術」の章を見て下さい。
ルール8 ひとのプライバシーを尊重しよう
あなたは同僚の机の引き出しの中身を探ろうなどと考えたことはもちろんないでしょう。つまり、ひとの電 子メールも読んではいけないのです。ところが、不幸にして、これを読んでしまう人がたくさんいるのです。 これだけでひとつの章をたてるに値するのですが、ここではちょっと警告がわりのエピソードを挙げておきま しょう。私はこれを、「のぞき屋の海外特派員のケース」と呼んでいます。
のぞき屋の海外特派員のケース
1993年にロサンゼルス・タイムズ、モスクワ支局勤務の高名な特派員、マイケル・ヒルツィクが同僚の電子 メールを読んでいるところを捕まりました。同僚達は、システム記録によって自分達がコンピュータの傍にい なかった間に誰かが電子メールをチェックするためログインしていることに気がつき、おかしいと思い始めた のです。そこで、おとり捜査をしたのです。同紙の海外支局からのメッセージに、にせ情報を埋め込みました。 ヒルツィクはそのメールを読んで、後で同僚に、その情報(実はにせもの)のことを尋ねたのです。ビンゴ!懲戒処分として、ヒルツィクは即座に同紙のロサンジェルス支局の別の部署に飛ばされました。
教訓:他人のプライバシーの侵害は、ネチケット違反というだけでなく、仕事を失うことすらありうるとい うことです。
ルール9 権力を乱用しないこと
サイバースペースには、人よりも力を持った人が存在します。MUD(Multi-user dungeons)の中にいる魔法使い、職場の専門家、あらゆるシステムのシステム管理者たちです。
他の人よりもよく知っていたり、人よりも力を持っているということが、その有利な点を利用する権利まで
認められるというものではありません。たとえば、システム管理者は、絶対に個人の電子メールを読んではな らないのです。
コンピュータネットワーク上での権力の濫用については、111ページ「最悪のネチケット違反」の章をご覧ください。プライバシーの詳細については、163ページ「電子メールのプライバシー―大いなる幻想?―」をご覧ください。
ルール10 ひとの過ちには寛容に
誰でもかつてはネットワークの初心者だったのです。しかも、だれもがこの本を読んでいるというわけでは ありません。そこで、人が間違いをしたら、それが文字の間違いであれ、文字の間違いを指摘する罵倒であれ、 どうしようもない愚問であれ、不必要に長い回答であれ、やさしく対応してあげましょう。それが小さな間違 いであれば、何も言ってあげる必要もないでしょう。これはぜひ何か言ってやらねばと思う場合にも、実際に 行動するまえに良く考えて下さい。あなた自身のマナーがとてもよいからといって、ひとの行為を直すことが 許されているというわけではないのですから。
ひとに誤りであることを教えてあげようと決めた場合には、ていねいに指摘するように、またなるべく公開 ではなく私信で知らせるようにして下さい。疑わしいところは、相手に有利なように解釈してあげましょう。
相手は、ただよく知らないだけなのだと考えることです。指摘するにあたって、決して傲慢であったり、自分 が正しいんだということを押しつけてしまってはいけません。誤字脱字を攻撃する罵倒の文章にはの誤字脱字 があるのが、ほとんど自然法則のようになっているのと同様、ネチケット違反を指摘する文章というのは、え てしてネチケット違反の典型的な見本になりやすいのです。
Copyright by Virginia Shea
訳 松本 功(訳注☆) 協力 菊地敦子(訳注※)
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